斜めの話

新幹線で山間部を通る時、窓の外の景色に驚かされる。

斜めなのだ、見事に。

道はもちろん、家も車も、お墓やお寺まで、全てが斜面に対して垂直に建っていて、それを窓の中から見ると、あたかも前方に傾いているように見えるのだ。

いや、建っているというよりはむしろ、生えていると言った方が正しいか。見よ、自動車に至っては、もはや壁を走っているではないか。その様はまるで派手なアクション映画を彷彿とさせるような見事な走りっぷりである。

斜めの概念を知らない人にあの景色を見せれば、斜めがどんなものか瞬時に理解するだろう。「なるほど、あれが斜めなのね」と、きっと膝を叩いて唸るに違いない。

ラクガキ149

しかし、真相はこうだ。

新幹線は乗り心地を保つため、またより速く走るために、自ら斜めに傾いて走行しているらしい。

特に重要なのはカーブ。新幹線が傾かないままカーブを走ると、遠心力が起きて我々乗客に大きな負荷がかかってしまう。そこで、意図的に車体を内側へ傾けることで遠心力を相殺すれば、快適な乗り心地とスピードを保ったまま、安全にカーブを通過できるというわけなのだ。なるほど、全く素晴らしい技術だね。

つまり傾いていたのは窓の向こうの世界ではなく、我々新幹線側であったのだ。

窓の外の人たちからすれば異様なのは我々の方であって、彼らにとっては家も車もお墓もお寺も、全てが真っ直ぐであるわけだ。

何が言いたいのかと言うと、見る人の立場によって物事の見え方はこうも違って見えるということ。

……なんて堅苦しいことではなくて、ただただ傾斜がすごい、これに尽きる。

皆さんも新幹線に乗った際は(特に静岡あたり)、ぜひ外の斜めっぷりを見てほしい。すごいんだから、マジで。