ラクガキ80

秋なので、最近読んだ中で特に面白かった本の話でもします。

(ネタバレあるかもしれません。まだ読んでない人、これから読むつもりの人はご注意ください。)

むらさきのスカートの女…今村夏子
考察の予知や多くの謎だけを残して過ぎ去っていくような、そんな話が私は大好きです。
一人取り残されたような読後感の中で、バラまかれた情報を基に自分なりの答えを見つけ出す。私はこの作業がたまらなく好きなのかもしれません。
結局「むらさきのスカートの女」とは、「黄色いカーディガンの女」とは、そして「わたし」とは一体誰だったのか。
兎にも角にも「これだけは断言できる!」という点は、「主人公はやべえ奴だ」ってことです。

眠れない夜は体を脱いで…彩瀬まる
5編の物語から成る、とてもあたたかい作品集です。
アイデンティティやコンプレックス、他人との隔たり、価値観の相違。
そういった苦悩や葛藤を抱えた各編の主人公たちは、「体を脱ぐ」ことで各々の魂を昇華していきます。
「ああそうだ。私は私でいいんじゃないか」と、夜のしじまに想いを更けるような、そんな温柔な気持ちになること間違いありません。

クラウディアのいのり…村尾靖子
「美しい」という言葉すら陳腐になってしまうような、そんな愛の史実です。
恋人として、家族として、友として、心の底から想い合っているからこそ、迎えることを決断した運命。
クラウディアの残した手紙に、本物の愛の形を見ました。
おそらく私の中で、今年一切ない物語となりそうです。
私が読んだのは絵本版でしたが、どうやら単行本でも出版されているようですね。そちらもいつか読んでみようと思います。

読書家でも無いのに、偉そうに長々と語ってしまいましたが、上記の本はどれもおすすめです。

読書の秋も残り短いですが、気になったものがあったら是非読んでみてください!